日本金属工芸研究所・活動ブログ

銅像とブロンズ像は何が違うのか?

銅像とブロンズ像は何が違うのか?

このテーマ、彫刻やモニュメントなどに関わる仕事をしている人であれば、一度は聞かれたことがあるかもしれません。

「銅像とブロンズ像って、同じもの?違うの?」と。

関係者であれば、おそらくなんとなく「似たようなものです」とか「素材がブロンズならブロンズ像でしょ」と答える人もいるでしょう。

しかし、「では、なぜ"銅像"と呼ぶのか?」「ブロンズ像とは何が違うのか?」と突っ込んで聞かれると、明確に説明できる人は案外少ないかもしれません。

そこで今回は、弊社がこれまで扱ってきた経験をもとに、「銅像」と「ブロンズ像」の違いについて、あらためて整理してみたいと思います。


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銅像とは何か?

まず、「銅像」という言葉について考えてみましょう。

一般的に「銅像」と言うと、歴史上の人物や偉業を成し遂げた人物の姿をかたどった彫刻をイメージする人が多いと思います。公園や駅前、学校の敷地内などに建立されているものが典型的ですね。

つまり、銅像とは、人物や動物などをかたどった立体作品で、特に「記念のために設置される像」全般を指す言葉です。

胸像や全身像など、肖像彫刻もすべてこのカテゴリに含まれます。

この「銅像」という言葉には、実は素材を特定する意味は必ずしも含まれていません。

「銅でできた像」という字面から、つい素材の話と思いがちですが、現代においては石像や樹脂製の像でも、「銅像」と呼ばれている例が見られるのです。

しかし、多くの「銅像」は実際には金属でつくられており、その金属の主な素材が「ブロンズ(青銅)」である、というのが一般的な構造です。


ブロンズ像とは?

では「ブロンズ像」とは何かと言えば、文字通りブロンズという金属素材を使って作られた像を指します。

ブロンズは、銅(Cu)を主成分に、錫(Sn)や亜鉛(Zn)などを加えて作られる合金です。

代表的な成分構成としては、

  • 銅:85%
  • 錫:5%
  • 亜鉛:5%
  • その他微量元素

などが挙げられます。ただしこれはあくまで一例であり、実際には用途や製作時期、鋳造方法などにより、細かい割合はまちまちです。

たとえば、銅87%、錫9%、亜鉛1.8%などといった構成も珍しくありません。

ブロンズは古来より彫刻や美術品に使われてきた素材で、強度があり鋳造しやすく、また酸化によって表面に独特の風合い(緑青)を生むことから、表現素材として高く評価されてきました。

つまり、「ブロンズ像」とは、素材にブロンズを用いた彫刻作品という、あくまでも"素材"に着目した呼称なのです。


では、銅像とブロンズ像は何が違うのか?

ここで核心に迫ります。銅像とブロンズ像の違いとは何なのでしょうか。

答えを一言でいうならば、「銅像」は目的・用途・形に着目した言葉、「ブロンズ像」は素材に着目した言葉と言えるでしょう。

つまり、「誰かの偉業を記念する像」は銅像、「ブロンズという金属でできた像」はブロンズ像。両者は必ずしも相反するものではなく、多くの場合、重なり合っているのです。

現実には「銅像」と呼ばれていても、それがブロンズ製であれば「ブロンズ像」でもありますし、逆に「ブロンズ像」として美術館に展示されている現代彫刻の中には、人物の記念とは関係ない抽象的なものもあります。それらは「銅像」とは呼ばれないことが多いでしょう。


表現の曖昧さと、メダルの例

このような曖昧な呼び分けは、実は他にも見られます。たとえば、オリンピックのメダルの名称です。

日本語では「金メダル・銀メダル・銅メダル」と呼ぶのが普通ですが、英語表記になると「Gold・Silver・Bronze」となります。あれ?銅は「Copper」のはずでは?と思った方もいるかもしれません。

実はここにも同じ構造があるのです。「Copper」は素材の純粋な元素名ですが、「Bronze」は合金であり、歴史的にメダルや芸術品の素材として定着しているため、表現としても「Bronze Medal」となっているのです。

この例を通してもわかるように、私たちは日々、素材としての正確性と、用途・象徴性としての名称を混同して使っているのです。


結論として

「銅像」と「ブロンズ像」。この二つの言葉の間に明確な線引きがあるとは言い切れません。

しかし、大まかに言えば、「銅像」は人物をたたえる目的で立てられた像のこと、「ブロンズ像」はその像が何であれ、ブロンズを素材として作られていることを示しています。

私たちは、日々の言葉の中で、思った以上に多くの「なんとなく」で成り立っている表現を使っているのかもしれません。

 

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