日本金属工芸研究所・活動ブログ

石膏原型からブロンズへ ブロンズ像の制作

ブロンズ像を製作する過程には、いくつもの段階があり、どの工程も非常に繊細で重要な意味を持っています。

まず最初に行うのが「原型」の制作です。この原型は、粘土や木材、樹脂などさまざまな素材を用いて造形されます。

使用する素材は、作品のサイズや細かさ、また作家の意図や技術的な条件によって選ばれます。中でも粘土原型は柔軟性が高く、造形の自由度が高いため、最も多く用いられる素材の一つです。

この原型が完成すると、それを元に「石膏型」を取ります。つまり、一度粘土などで形作ったものを、石膏を使って再現し、それを「石膏原型」として次の工程に進めます。

この段階で、細部の表現や面の整え、輪郭の調整などを行うことが多く、いわば"微調整"の重要な機会となります。

特に、人物像や肖像レリーフ、胸像などのように表情や細かなニュアンスが命となる作品では、この段階での補正が仕上がりを大きく左右することもあります。

石膏原型は、完成品となるブロンズ像に対して"マスター型"とも呼ばれる基準の原型です。

このマスターを元に、さらに「凹型(ネガ型)」を作ることで、複数個の量産にも対応可能になります。

記念品やレリーフ、トロフィーなど、複製が求められる場合にはこの凹型の存在が不可欠となります。

一方で、1点物の作品である場合には、石膏原型そのものを使って直接鋳造用の工程に進み、最終的にブロンズとして仕上げていきます。

石膏の段階では、素材が真っ白なため、作品全体が非常に明るく、清楚な印象を与えます。

この"白さ"には独特の魅力があり、凹凸の陰影もやわらかく映るため、造形全体がなめらかで美しく見えることがあります。

逆に言えば、白いことで立体感が見えにくくなる場合もあり、特に写真や間接照明下では、本来の立体感や陰影のバランスが伝わりにくくなることもあります。

そのため、石膏原型の印象だけで最終形を想像すると、完成したブロンズ像とのギャップに驚かれることも少なくありません。

「この白いまま仕上げてしまいたい」というご希望を頂くこともありますが、金属として真っ白な表現を実現するのは技術的に非常に困難です。

銀色の金属光沢を持たせる銀メッキなどの処理は可能ですが、"真っ白"という金属は現実的には存在しません。

パール系の塗装や表面加工によって、やや白みがかった表現を試みることはできますが、これをブロンズ像で安定して実現するのは非常に難しい技法のひとつです。

彫刻において「白」という色は、光と質感のバランスが絶妙なだけに、扱いが難しい色でもあります。

特に肖像レリーフや胸像のような人物表現の場合、石膏原型とブロンズ像での印象の違いが顕著に出ることがあります。

石膏では柔らかく見えた輪郭が、ブロンズではくっきりと現れ、また色味や光沢の違いにより、まったく別の雰囲気を感じさせることもあります。

ですので、制作段階では常に「完成時の金属の質感」を意識しながら工程を進める必要があるのです。

お客様やご依頼者の皆様には、なるべく早い段階で「ブロンズになったときの仕上がり」をご想像いただけるよう、説明を工夫し、場合によってはCG合成や過去の制作例などを用いてご案内するよう心がけております。

制作の過程において「白い石膏原型」と「ブロンズ仕上げ」のギャップをしっかりと共有することで、最終的な仕上がりにご満足いただける作品づくりを目指してまいります。

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