消えゆくアート小物 ― 栓抜きという存在
弊社の作品の中には彫刻やレリーフといった本格的なアート作品とは別に、「アート小物」と呼ばれるジャンルがあります。
実用品でありながら、造形美やデザイン性を重視してつくられた小さなオブジェのようなもの。
その中のひとつに、かつて製作していた「栓抜き」があります。
今では少し懐かしく感じられるこの言葉ですが、ビン入りの飲み物が当たり前だった時代には家庭のどこにでも一本はあったはずの道具です。
ですがペットボトルや缶が主流になった現在、栓抜きを必要とする場面はほとんどなくなりました。
いつの間にか、食卓からも台所の引き出しからも姿を消してしまったのです。
弊社でも、調べてみるとここ20年以上は新規に製作をしておらず、お客様との打ち合わせや企画段階で話題に上ることすらありません。
いま市場に流通しているもので十分に足りている・・・。
むしろ「もう必要がないもの」として、栓抜きは静かにその役目を終えつつあるのかもしれません。
それでも、よく見るとキッチン雑貨店などではデザイン性の高い栓抜きが今も少量ながら販売されています。
ステンレスや木、真鍮などを用いた美しい造形で実用品であると同時に「生活を彩るデザイン」として残っているのでしょう。
しかし、そうしたものも一日に一つ売れるかどうか。
時代の流れは確実に、栓抜きを「懐かしさの記号」へと変えてしまいました。
写真に残っているこの栓抜きは、数十年前に弊社で製作されたものです。
実は商品としては不良品に分類され、表面の傷や金具の取り付け不具合などがあったため、正式な在庫にはなりませんでした。
すぐに処分してもよかったのですが、なぜか廃棄できずに長いあいだ保管され、倉庫の片隅で眠っていました。
数年前にようやくスクラップとして処理をしましたが、その瞬間には一抹の寂しさを覚えました。
この栓抜きには、当時のデザイン感覚が色濃く反映されています。
女性の裸体をモチーフにしたフォルム。
今の感覚からすると、ややオールドファッションであり、特に女性の目から見れば好ましくないと感じられる方も多いでしょう。
それでも、当時はこのような造形が「美」や「モダンデザイン」の象徴だったのです。
著名なデザイナーや彫刻家が原型を手掛けたものもあり、そこには時代の美意識と遊び心が息づいていました。
栓抜きという道具が「使われるもの」から「飾られるもの」へ、そして今や「記憶の中のもの」へと変わっていく。
その過程を、私たちはものづくりの現場で静かに見てきました。
かつては日常に寄り添っていた小さなアートが、時代とともに役目を終えていく姿を見るのはどこか切なくもあります。
それでも、栓抜きのような存在があったからこそ、「機能美」という概念が私たちの製作にも根づいたのだと思います。
単なる道具ではなく、使う人の手に心地よく、見る人の目にも美しいものを―
―そんな想いが、いまも弊社の作品づくりの根底に流れています。
時代とともに消えていくもの。
けれど、その痕跡や記憶は確かに私たちの中に残っている。
そんな小さなアート小物たちに、静かに感謝を捧げたいと思います。





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