日本金属工芸研究所・活動ブログ

レリーフ製造 彫刻 原型制作

レリーフ彫刻や肖像レリーフの制作工程の中で、もっとも重要な工程はどこかと問われれば、私は迷わず「原型制作」と答えます。

完成後はブロンズやその他の素材に鋳造され、額や楯に取り付けられて展示されるレリーフ作品ですが、その出来栄えの良し悪しは、鋳造以前の段階、

すなわち原型の完成度によってほぼ決まってしまうと言っても過言ではありません。

原型制作には大きく分けて二つの考え方があります

日本金属工芸研究所でレリーフの原型を制作する際、主に用いられる素材には「木」と「粘土」があります。
それぞれ制作の考え方がまったく異なり、そこに彫刻という仕事の奥深さがあります。

木を用いた原型制作の場合は、木の塊から不要な部分を削り取っていく方法になります。
いわば「引き算の造形」です。
最初に用意された素材の中に、すでに完成形が内包されていると考え、それを少しずつ掘り出していく感覚に近いかもしれません。

一方、粘土で制作する場合は、何もない状態から形を足していく方法になります。
こちらは「足し算の造形」です。
盛り付け、押さえ、ならしながら形を作り上げていき、必要に応じて削ったり整えたりして完成へと近づけていきます。

もちろん、実際の制作現場では単純に「木=引き算」「粘土=足し算」と割り切れるものではありません。
木彫であっても途中で盛り足しを行うことはありますし、粘土造形でも最終的には削り込みや整理の工程が不可欠です。
しかし、この最初のアプローチの違いが、制作者の思考や表現の方向性に大きく影響します。

石膏に置き換える前の原型こそが、最大の分岐点

レリーフ彫刻では、最終的に石膏原型を経て鋳造工程へと進みます。
この石膏に置き換える前の段階の原型こそが、作品の完成度を左右する最大のキーポイントです。

ここで必要とされるのは、単なる器用さや経験だけではありません。
・モチーフをどう捉えるかという観察力
・画面全体をどう構成するかというデザイン力
・凹凸の強弱やリズムをどうつけるかという造形感覚
・そして、それらを形に落とし込む確かな技術

これらがバランスよく備わってはじめて、質の高いレリーフ原型が生まれます。

特に肖像レリーフの場合、人物の似姿だけでなく、その人らしさや雰囲気、品格といった目に見えない要素まで表現する必要があります。
表情のわずかな起伏、頬や額の量感、衣服や背景との関係性など、原型段階でどこまで詰められているかが、最終的な印象を大きく左右します。

実は「鋳造前」こそが一番大切な工程です

レリーフ楯や記念用の肖像レリーフを制作する場合、多くの方は「鋳造」や「仕上げ」に目が向きがちです。
しかし実際には、鋳造する前の原型制作こそが、最も重要で、最も神経を使う工程なのです。

ブロンズ像と呼ばれるような鋳造は、原型を忠実に写し取る工程です。
裏を返せば、原型に存在しない魅力は、鋳造によって新たに生まれることはありません。
原型が曖昧であれば、その曖昧さはそのまま金属に置き換えられ、完成後にどれだけ手を加えても限界があります。

だからこそ、私たち日本金属工芸研究所は原型制作の段階で妥協をしません。
時間をかけ、手を入れ、何度も全体を見直しながら、完成形を見据えた原型を作り上げていきます。

レリーフ彫刻とは、完成品だけを見ると静かな仕事に見えるかもしれません。
しかしその裏側では、原型制作という、最も密度の高い彫刻の時間が流れています。
その積み重ねこそが、最終的に長く愛されるレリーフ作品へとつながっていくのです。

半立体、2.5次元ともいえるレリーフ彫刻の製造は原型制作にかかっているのです。

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